起きると悪く、横になると楽になる頭痛はありませんか?
「頭痛の検査では異常なしと言われた」
「片頭痛として治療しているのに、まだ良くなりきらない」
「立っているとつらく、横になると症状が楽になる」
このような症状がある場合、脳脊髄液漏出症が関係している可能性があります。 脳脊髄液漏出症は、脳や脊髄の周囲を満たしている脳脊髄液が漏れることなどにより、 頭痛、めまい、首や肩の痛み、耳鳴り、吐き気、倦怠感などが現れる病気です。
症状や経過には個人差があります。診断は問診、診察、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。
このような症状はありませんか?
当てはまる項目があっても、脳脊髄液漏出症とは限りません。 他の頭痛疾患との鑑別を含めて診察します。
病気の原因
脳脊髄液漏出症では、脳や脊髄を包んでいる 「硬膜」という丈夫な袋に、小さな穴や裂け目ができている可能性 があります。
硬膜の中は脳脊髄液で満たされています。 硬膜に穴や裂け目ができると、そこから脳脊髄液が外へ漏れ出し、 頭痛、めまい、首や肩の痛み、耳鳴り、吐き気、倦怠感などの症状が 起こることがあります。
漏れは、硬膜の前面側、つまり体の前側に起こることがあります。 ただし、穴や裂け目が非常に小さい場合には、 MRIなどの画像検査でも漏れている場所がはっきり分からないことがあります。
脳脊髄液が漏れるきっかけ
脳脊髄液漏出症は、次のような出来事をきっかけに発症することがあります。 一方で、はっきりとした原因が分からないまま発症する場合もあります。
外傷
交通事故、スポーツによる頭部や背部の打撲、転倒などによって 硬膜に負担がかかり、小さな穴や裂け目が生じることがあります。
日常動作
強いくしゃみや咳、重いものを持ち上げる動作、 強くいきむ動作などがきっかけになることがあります。
医療処置
腰椎穿刺、硬膜外麻酔など、 針を使用する医療処置の後に脳脊髄液が漏れることがあります。
原因不明
外傷や医療処置などの明らかなきっかけがなく、 原因がはっきりしないまま発症することもあります。
硬膜の穴や裂け目が小さい場合には、画像検査で漏れが明確に確認できないことがあります。 当院では画像所見だけではなく、症状の特徴、姿勢による変化、 発症までの経過などをあわせて評価します。
なぜ起き上がると症状が悪化するのですか?
横になっている時は、頭から腰までの高さの差が小さくなり、 脳脊髄液にかかる圧も比較的低くなります。 そのため、硬膜に穴や裂け目があっても、 脳脊髄液の漏れは比較的少なくなり、頭痛やめまいが軽くなることがあります。
一方、起き上がると、頭から腰までの間に大きな高さの差が生じます。 この高さの差によって脳脊髄液に圧がかかり、 特に下の方では圧の影響が強くなります。
その結果、硬膜の穴や裂け目から脳脊髄液がより漏れやすくなり、 頭痛、めまい、首の痛み、耳鳴り、吐き気、だるさなどの症状が 強くなると考えられます。
脳脊髄液漏出症に特徴的な症状
このような仕組みによって、 「起き上がると悪化し、横になると楽になる」 という特徴的な症状が現れます。
- 横になっている時は比較的楽に過ごせる
- 起き上がると頭痛やめまいが強くなる
- 立っている時間が長いほどつらくなる
- 午前中より午後に症状が悪化する
- 再び横になると症状が軽くなる
※症状の現れ方や原因には個人差があります。 また、起立性頭痛は脳脊髄液漏出症以外の病気でも起こることがあるため、 診察と検査による総合的な判断が必要です。
検査について
脳脊髄液漏出症の診断では、頭部だけでなく、頚椎や胸椎など脊髄側の評価も重要です。 頭部MRIで異常を認めなくても、それだけで脳脊髄液漏出症を完全に否定できるとは限りません。
| 脳MRI | 脳腫瘍、脳卒中、慢性硬膜下血腫など、頭痛を引き起こす他の病気がないかを確認します。 また、脳脊髄液圧の低下を疑う間接的な所見がないかを評価します。 |
|---|---|
| 脊髄MRI | 頚椎、胸椎、腰椎などを撮影し、 脊髄周囲に髄液の漏れを疑う所見がないかを評価します。 |
| 造影ミエロCT | 腰椎穿刺によって造影剤を脳脊髄液腔内に注入し、 漏れている場所をより詳しく調べる検査です。 必要性やリスクを検討したうえで実施します。 |
画像で見えない=病気ではない、とは限りません
脳脊髄液漏出症には画像診断基準がありますが、 画像で漏れが明らかにならない場合でも、 起きると悪化して横になると軽くなる頭痛が続いている患者さんがいます。
当院では、画像だけではなく、症状、体位との関係、これまでの経過、 片頭痛治療への反応などを総合して評価します。
診察時に確認する内容
姿勢との関係
起き上がってから何分で症状が出るのか、 横になると何分で改善するのか、 午前と午後で差があるのかを確認します。
これまでの経過
頭部打撲、交通事故、スポーツ外傷、出産、腰椎穿刺などの既往や、 これまで受けた検査、治療内容を確認します。
腰椎穿刺を伴う検査では、穿刺によって一時的に頭痛やめまいが悪化することがあります。 検査の必要性、方法、起こり得る合併症について事前に説明したうえで実施します。
治療について
脳脊髄液漏出症の治療は、 症状の強さ、発症からの期間、画像所見、これまでの治療経過などを確認し、 段階的に進めます。
問診・診察
頭痛やめまいの特徴、体位による変化、これまでの経過を詳しく確認します。
画像検査
脳MRI、脊髄MRIなどを行い、必要に応じて追加検査を検討します。
保存的治療
安静、水分摂取、内服治療などを行い、症状の経過を確認します。
生食加圧テスト
必要に応じて、生理食塩水によって一時的に髄液圧を上げ、 頭痛やめまいが改善するかを確認します。
治療を検討
症状、画像所見、加圧による反応などを総合し、 ブラッドパッチや硬膜外気体注入療法などを検討します。
保存的治療
発症から間もない場合は、安静、水分摂取、内服治療などによって改善する可能性があります。 症状が強い時期は、無理に活動せず、横になって休むことが重要です。
当院では、患者さんの症状に応じて、漢方薬を含む内服治療を検討することがあります。 治療効果には個人差があります。
生食加圧テスト
画像所見だけでは判断が難しい場合には、 腰椎穿刺によって生理食塩水を注入し、 一時的に脳脊髄液の圧を上げた時に症状が改善するかを確認することがあります。
生食加圧テストは、それだけで脳脊髄液漏出症を確定する検査ではありません。 症状、画像所見、治療反応を総合して、 その後の治療方針を検討するための情報として用います。
ブラッドパッチ
ブラッドパッチは、ご自身の血液を硬膜外腔に注入し、 髄液が漏れている部分をふさぐことを目的とした治療です。 漏れの位置や広がり、患者さんの状態などを考慮して、 注入する場所や治療方法を判断します。
硬膜外気体注入療法
当院では、生食加圧テストで症状の改善がみられた患者さんなどに対して、 硬膜外気体注入療法を検討する場合があります。
これは硬膜外腔に気体を注入し、髄液圧に関連する症状の改善を図る治療です。 適応、期待できる効果、合併症、他の治療方法について十分に説明し、 同意を得たうえで実施します。
※すべての患者さんに同じ検査や治療を行うわけではありません。 診察結果に基づき、必要性と安全性を個別に判断します。
よくあるご質問
頭部MRIで異常なしと言われました。それでも受診できますか?
はい。頭部MRIだけでは判断が難しいことがあります。 姿勢による症状の変化やこれまでの経過を確認し、必要な検査を検討します。
片頭痛薬が効く場合は、脳脊髄液漏出症ではないのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。 片頭痛薬で一部は改善しても、姿勢によって悪化する頭痛が残る場合には、 脳脊髄液漏出症の関与を検討することがあります。
診断基準に合わない場合は治療できませんか?
画像診断基準は重要ですが、症状や経過も含めて評価します。 診察結果に応じて、追加検査や治療反応を確認する方法を検討します。
最初からブラッドパッチを受けられますか?
最初からすべての方にブラッドパッチを行うわけではありません。 症状、画像所見、保存的治療の経過などを確認し、適応を判断します。
他院で頭痛が良くならずにお困りの方へ
当院は脳脊髄液漏出症の治療までの対応が可能です。
他院で頭痛が良くならずにお困りの方はぜひ受診をご検討ください。
これまでに受けたMRIやCTなどの画像データ、検査結果、お薬手帳をお持ちの場合は、 受診時にご持参ください。
診療予約はこちら突然発症した激しい頭痛、これまで経験したことのない頭痛、 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、意識障害、けいれん、発熱などを伴う場合は、 脳脊髄液漏出症以外の緊急性の高い病気も考えられます。 速やかに救急医療機関を受診してください。


